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桜の季節が巡っても
第15章 蜜夜の春
「…消さなくて、いいです」
残念な思いは拭えなかったが、でも一緒にいれるだけで十分だった。
彼女が望む通りにしようと思っていたのだが。
「…消したら、先生がよく見えなくなってしまう」
-だから、このままでいい。
思いも寄らない事を言われ、秀王は絶句してしまう。
そのまま固まっていれば、彼女は急にあたふたし始める。
「へ、変な意味じゃないからねっ?先生を見たいって言うのは、先生の裸をよく見たいとか、そーいうんじゃなくてっ」
信じてくれてるだろうか-瞬きもせずに見返され、増々泉夏は焦る。
「確かに電気を消せば、私の恥ずかしさはなくなるけど。でもその代わりに、先生の顔もよく見えなくなってしまう。先生と初めて過ごす夜なのに。あと数時間でまた暫くお別れなのに。それはやだなって思うから。先生をちゃんと見ていたいから。だから-」
-このままでいいです。
羞恥に堪える泉夏の身体は、秀王の胸の中に収まった。
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