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桜の季節が巡っても
第1章 心恋の春
薬学部・本館、Y202講義室。
二時間前には、静まり返っていた教室。
静寂の中で一人、スマートフォンを弄ってみたり、読みかけの小説を開いたりしていたのだけれども。
半分以上の席が埋まりつつある今は、甲高い女子の噂話や、昨夜のテレビ番組の話題で爆笑している男子学生の声で、静けさとは最早無縁の空間となっていた。
ああ、緊張する-泉夏は、手に持っていた菓子パンの袋を握り締める。
一番乗りで講義室に到着した割に、ようやく三十分前に封を開けたものの-どうしても二口目以降が進まず、結局鞄に押し込んだ。
どうしよう、あと少しで講義が始まる-。
不意に。
彼女は教壇の最前列、ど真ん中の席から勢いよく立ち上がった。
席から離れかけ、化粧ポーチと歯ブラシを忘れた事に気が付いて、慌てて取りに戻る。
教室から最も近いトイレに向かう途中、ふと窓の外の桜に目がいった。
半月前はまだピンク色で、綺麗だったのにな-ちょっぴり感傷的に似た気分となり、瞳を細める。
二時間前には、静まり返っていた教室。
静寂の中で一人、スマートフォンを弄ってみたり、読みかけの小説を開いたりしていたのだけれども。
半分以上の席が埋まりつつある今は、甲高い女子の噂話や、昨夜のテレビ番組の話題で爆笑している男子学生の声で、静けさとは最早無縁の空間となっていた。
ああ、緊張する-泉夏は、手に持っていた菓子パンの袋を握り締める。
一番乗りで講義室に到着した割に、ようやく三十分前に封を開けたものの-どうしても二口目以降が進まず、結局鞄に押し込んだ。
どうしよう、あと少しで講義が始まる-。
不意に。
彼女は教壇の最前列、ど真ん中の席から勢いよく立ち上がった。
席から離れかけ、化粧ポーチと歯ブラシを忘れた事に気が付いて、慌てて取りに戻る。
教室から最も近いトイレに向かう途中、ふと窓の外の桜に目がいった。
半月前はまだピンク色で、綺麗だったのにな-ちょっぴり感傷的に似た気分となり、瞳を細める。

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