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桜の季節が巡っても
第15章 蜜夜の春
ひとめであなたに恋した、初めての春。
心奪われた、知性を秘めた瞳。
細く長い指が、ペンをノートの上に走らせる。
息遣いを感じたくてこっそり盗み見した、僅かに開(あ)いた唇。
さり気なさを装いそっと顔を寄せれば、清涼感溢れる匂い。
あなたの姿を探し、追いかけていた頃。
そのひとつひとつ。
その全て。
いつだってどきどきした。
大学の廊下で、三日連続擦れ違った。
自販機を利用しようとするあなたと鉢合わせした。
週に一度の講義の時間-或いは、偶然。
それ以外にあなたに逢う方法なんて。
夏休みや春休みにでもなれば、数か月も逢えない。
辛いばかりの、片恋の一年間。
あなたが私の前から黙っていなくなってしまった二年目。
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