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桜の季節が巡っても
第15章 蜜夜の春
その時でさえ。
その時だから。
彼は違(たが)わず優しかった。
「大丈夫?」
「平気?」
自分の中にほんの僅か腰を進める都度気遣ってくる彼に、泉夏は思わず苦笑した。
「『訊かないでいい』っていいって言ったのに、先生は結局なんでも訊いてくるんだね」
どれだけ待ち望んできたか知れない時間だった。
世界で今一番幸せなのは、自分-断言出来るのに。
その甘い空気に似つかわしくない笑い声を立てた泉夏に、訊いた側の秀王もまた苦笑いした。
「うん。でもやっぱり心配だから」
言い訳のように呟き。
秀王は泉夏に顔を寄せた。
「痛くない?」
「うん」
「我慢させてない?」
「うん」
恥ずかしいけど、嬉しい-はにかむ泉夏を可愛く思い、秀王は彼女の髪を撫でた。
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