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桜の季節が巡っても
第16章 永劫の春
「…私、何も言ってないけど」
「うん」
「…今、意味深な言い方した」
「してない」
「した」
「してないよ」
「した。絶対したっ」
泉夏は勢いづいて両手をベッドにつき、身体を起こした。
軽く睨んで後ろを向けば-彼と視線が合う。
いつみても涼しげな微笑みに捕らわれ、続きは言えない。
泉夏が怯んでいれば、腰を抱かれ、片腕を後方に引かれた。
「『大丈夫』って言いたかった?」
近付いた彼の顔が囁いた。
泉夏が大いに動揺していると、啄むように口付けられた。
「言えなかったから『大丈夫になってきてる』?」
次々に狼狽えざるを得ない事を問われ、泉夏は押し黙るしかない。
彼が知らないはずはなかった。
全部お見通しで、あえて訊いてきている。
それが分かるから恥ずかしくて。
悔しくて。
でも、何も言えなくて。
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