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桜の季節が巡っても
第16章 永劫の春
「先生は優秀で、立派なひとだって知ってる。みんなから慕われて、尊敬される先生にまたすぐなれるって、誰よりもよく知っている。…ただの我儘なの。ほんと、子供でごめんなさい。こうして先生といつでも一緒にいれるようになって、望みは全部叶ったはずなのに。欲張りだなって、自分でもよく分かってる。…それでも、四月から先生を『先生』って呼べる学生達が、やっぱり羨ましい。私は呼びたくても…大学の中ではもう絶対無理なのに。…また、私の大学に来て欲しかった。私だけの先生じゃなくても構わないから-」
-もう一度大学で『先生』って呼びたかった。
絞り出すように、泉夏は告げた。
無理なのは重々承知している。
困らせるつもりも毛頭ない。
ただ、無性に羨ましい-それだけだった。
「大学を辞める時も、ひとこともないまま私の前からいなくなった。春になったらまた『先生』って呼べるって信じて疑わなかったのに。なのに先生はもう二度と、大学には戻って来なかった。だから尚更-」
-せめて、あともう一回って。
酷く参ってしまってる彼を容易に想像出来た。
だから胸に顔を埋(うず)めたまま、上げられない。
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