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桜の季節が巡っても
第3章 恋慕の秋
教室の中ほどの席で、心地良い声音にずっと酔っている。
流暢な話し方。
黒板に書かれる丁寧な文字。
眼鏡の奥から見渡す知性の光。
いつも思う。
いつもいつも願ってる。
あなたの声を聞き。
どんなにあなたの姿を追っても、誰にも咎められないこの時間。
永久(とわ)に続いたらどんなに幸せだろう。
教室の前方に掛けられた時計を見る。
一気に引き戻される現実。
九十分は、余りにも短い。
こんなにも短い、一方的な時間をどんなに積み重ねても、あなたとの距離は全然埋まらない。
それでも私にはこれしかない。
私とあなたを確実に繋ぐ唯一の空間。
流れる、この時間-。
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