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桜の季節が巡っても
第3章 恋慕の秋
「先生-」
授業の終わりに声をかける時はいつも緊張する。
黒板を綺麗に消した後。
講義で使ったテキストを片付け終わった後。
眼鏡を外した後。
全てを終えて、小さな安堵の息を吐(つ)いた時-。
なるべく彼の負担にならない瞬間(とき)を見極めて、一歩を踏み出す。
こんな風にしか、話しかける事も儘ならない自分-正直、憐れだなと思う事もある。
でも。
それでも。
私だけに向けられる言葉。
私だけに向けられる双眸。
私だけが感じとれるあなたの匂い。
それらが欲しくて欲しくて、堪らない。
泉夏に呼ばれ、秀王は顔を上げた。
訊くまでもなく理由が分かる彼は小さく頷く。
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