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第1章 心恋の春

出逢いは桜吹雪の下だった。

「嘘でしょ…」
左目から乾いた何かが落ちた瞬間、彼女は茫然と呟いた。
「あと十分で入学式が始まるっつーの…！」
普段はどちらかと言うと温厚な彼女だが、この時ばかりは別だった。
去年の三者面談。
当時の担任が薄ら笑いでほぼ合格は無理だろうと言い捨てた、難関理系大。
その時の憐れみにも似た担任の視線が、彼女の闘志に火を点けた。
絶対に絶対に見返してやる！－ 猛勉強に猛勉強を重ねた末に、見事現役合格を勝ち取った。
正にその大学の、晴れの入学式が間もなく開始されようとしていた。
母親から合格のお祝いに買ってもらった上品なスーツに身を包み、胸まで伸ばした艶やかな髪はきっちりとカール。
濃すぎず、薄っすらと、化粧も完璧。
全てがばっちり決まっていたのに－。