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桜の季節が巡っても
第1章 心恋の春
深い溜め息を吐き。
泉夏は今朝の食べ残しの菓子パンから口を離した。
「…胸がいっぱいで、どうしても喉を通らない」
「はいはい」
キャンパスの桜の木の下に設置されたベンチ。
仲良く並んで昼食をとっていた麻衣は肩を竦めた。
「それ、さっきから十回以上は聞いた。いい加減聞き飽きた」
サンドイッチを頬張りながら、麻衣も嘆息。
「中学生じゃないんだからさ、そんな陳腐な台詞吐かないでよ。胸がいっぱいだの、食事が喉を通らないだの。聞いてるこっちが恥ずかしくなるよ~!」 
麻衣が大袈裟に顔を顰めれば、流石の泉夏も頬を微かに染めた。
「…だって」
-仕方ないじゃない。
泉夏は午前中の講義を回想し、再び胸を高鳴らせた。
「かっこ良過ぎだよ。反則もいいとこ-」
言い終え、泉夏は自らの膝の上に突っ伏した。
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