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桜の季節が巡っても
第4章 予兆の冬
あなたにも絶対に不可能。
あなたは更に掻き乱してしまうだけ-…。
乱れながらも、名前を呼ぼうとしたその時。
本当に何故だか分からないのだけれども-不意に、彼は後ろを振り返った。
まるですぐそこに、誰がいるかを知っていたかのように。
ふたりの双眸が一つに繋がる。
心の準備が追いつかなくて、立ち尽くすしかない。
そんな動揺を酌んだのか、泉夏が言うよりも先に、秀王は口を開いた。
「おはよう」
見事なまでに整った彼の顔が、微かに優しく、崩れる。
自分が声をかけ、彼がそれに答える-いつもの決まり。
それが今朝は違う。
あなたが、私を、最初に-。
「…おはよう、ございます。有栖川先生」
たかだか朝の挨拶に、嬉しくて心が震えてしまう。
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