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桜の季節が巡っても
第6章 落涙の夏
「…大声出すから」
泉夏は声を絞り出した。
「今すぐ離してくれないなら、叫んでやるから。…襲われそうだって、言ってやる」
「それで気が済むなら俺は構わない」
抑揚のないそれで、返される。
「出来ないと思ってる!絶対大きな声で言ってやるんだから!」
頭に血が上る。
あなたをこんなにも愛してしまった私には、そんな事端から不可能だって知ってて言ってる。
しかし秀王は首を横に小さく振った。
「出来ないなんてこれっぽっちも思っていない。それだけ傷付けてしまったと反省してる。もしそれで少しでも気が晴れるなら構わないと本当に思ってる」
「…」
「大声を出してもらってもいい。ただお願いだから、頼むからその前に話を聞いて欲しい」
縋るような双眸で訴えられる。
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