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桜の季節が巡っても
第7章 傷心の秋
図書館に着いて早々、エントランスの脇に設けられたトイレに向かう。
汚してしまった顔をどうにか元通りに整え戻ると、先に閲覧室に行ってたはずの大樹が待ち構えていた。
伊東君?-言うより早く、右手首を攫われた。
どうしたの?-思う暇もなく、来たばかりの図書館の出口へ向かう。
デジャヴ。
前にも、こんな事が。
忘れてない。
先生にもこうして、右手を掴まれて。
触れられただけで熱くて。
疼いて。
幸せに-泣き出しそうだった。
今も残る、私だけに見える傷痕。
あの時とまるっきり同じ場所を、掴まれているのに。
寧ろ冷たいとすら感じ、気持ちも不思議なくらい冷めている。
図書館の外でようやく、大樹に手を離された。
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