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桜の季節が巡っても
第8章 忘却の冬
心持ち早歩きで駅まで向かったが、電車の到着の時間の方がやはり少し早かったらしく、既に彼はその場で待っていた。
肩の上で黒髪を揺らしながら、駆け寄る。
「ごめんなさい。ちょっと、遅れた」
「三分しか待ってない」
謝る泉夏に、大樹は悪戯な笑みを返した。
「…ごめん」
それを受け、泉夏はもう一度謝罪する。
「え、なに?ほんとに全然怒ってないし?何度も謝らないでよ」
大樹は自分の言い方が冗談に聞こえなかったのかと、逆に焦る。
「流川、最近よく図書館行ってるよね。そんなに本好きだとは知らなかった」
-あ、嫌味じゃなくてだよ?
自分の失言で再び彼女を責めるような事があってはならないと、すぐさま付け足す。
うん-泉夏は頷き、小さく笑った。
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