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桜の季節が巡っても
第8章 忘却の冬
壁紙も確かにお金はかかるが、社長さんのお家だし?それは大した問題ではないと思う。
深刻なのは、やはり身体だ。
何より吸ってる本人よりも周りの人間の方に害がある-どうにも納得いかない。
「…だってよ」
母親がああ言ってるのだから、我慢したら?-泉夏は龍貴を見遣った。
会社でも自分の家でも、愛煙家はほんと肩身が狭いよな-ぼやきつつ、龍貴は立ち上がった。テーブルから煙草とライター、それにスマートフォンを手にする。
そして、もう片方の手で泉夏の手首を掴んだ。
当然泉夏も腰を上げざるを得ず、そのままリビングの扉まで引っ張られてゆく。
「ちょ、ちょっと…!」
龍貴には無駄と知りつつも、一応抗議する。
「泉夏ちゃんは連れて行かなくてもいいでしょ。泉夏ちゃんも死んじゃうじゃないの!」
百合子は増々、語気を荒げる。
死ぬって-心配してくれているのは嬉しいんだけど、ストレート過ぎる言葉が逆に怖かったりする。
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