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桜の季節が巡っても
第8章 忘却の冬
両手の枷を外し。
自分の身体を避(よ)け、泉夏を優しく起こす。
信用は勿論しているけれど-いきなりの出来事に、やっぱり心と身体はついていけなかった。
震えが今頃やってきて、涙が零れそうになる。
「悪ふざけが過ぎた。謝る」
俯き黙る泉夏を抱き締め、龍貴は言った。
「嫌がるなよ」
「…大声で泣き叫んでやる」
泉夏は彼の腕の中で、半分本気の脅しを呟く。
「お袋に殺されるから、それだけはマジ勘弁してくれ」
「…じゃあ、もう一回ちゃんと謝って」
「ごめん。もうしない」
「…今回だけは許してあげる」
-龍だから特別に許すんだからね。
付け足された言葉の重みに瞳孔を開き-それから龍貴は笑って頷いた。
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