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桜の季節が巡っても
第8章 忘却の冬
「…龍が無理矢理引っ張って来たんじゃない」
「危機感感じてるなら、ここに来るまでに振り解けるだろ」
「私、龍を信じてるから。必要ない」
自らの身体に覆い被さる龍貴を、泉夏はしっかりと見上げる。
龍貴はそれを受けて、少し驚いたようだったが-なおも意地悪く続ける。
「俺って随分信頼厚いんだな。…でもいつ裏切られるか分からないから、注意するに越した事はない」
-まあ、これは俺に限らずだけど。
龍貴の嗤いに、泉夏は即答する。
「他の人は知らない。でも、龍は絶対にしない。私の知ってる龍は、絶対にそんな事しない」
はっきりと言い切る泉夏に、やがて龍貴は小さな息を漏らした。
「そこまで絶大に信用されてたら、流石の俺でもなんにも出来ないじゃん」
「…最初から何もする気なんてないでしょ」
-そろそろ手を離して。
願われ。
龍貴は苦笑し、あっさりと泉夏を自由にした。
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