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桜の季節が巡っても
第9章 邂逅の春
満開の桜の木の幹を挟み、背合わせに立つふたり。
顔と顔を寄せ合えそうで寄せ合えない。
腕をお互い伸ばせば簡単に触れ合える。
でも、触れられない。
こんなに近くにいるのに。
近くて-とても、遠い。
ずっと離れ離れでいた昨日までよりも、ずっと距離を感じる。
こんなに近いのに。
これ以上なくふたり、側にいるのに。
きっと彼には聞こえていただろうけど-泉夏は声を押し殺して泣いていたが、それも今はやっと落ち着いていた。
けれど、ふたりの間には沈黙が下りてたまま。
先程の彼の願いに答えればいい?
応えればいい?
でも。
でも-。
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