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第9章 邂逅の春

気持ちに区切りをつけ、遂に彼女を促そうとした時。
「…先生」
先に声を発したのは－彼女。
視線を逸らしながら、泉夏は告げた。
何を言われる？－大きな不安と、ほんの少しの期待で彼女の次の言葉を待つ。
「先生の大切な用事って…何？」
泉夏は彼を捉えた。
「先生が日本に帰って来た、大切な用事のふたつめって…なに？」
ただ黙っているのも限界で。
でもこの場に出来るだけいたくて。
ない知恵を必死に絞り出した末の－問い。
昨日気にはなっていたけれど、訊きそびれていた事。
「ひとつめは先生が教えてくれたけれど…ふたつめはなんなんだろうって」
答えてくれるのかくれないのか－どちらかは分からない。
引き延ばしてはみるけれど－返答にそんなに時間がかかるとも思えない。