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桜の季節が巡っても
第9章 邂逅の春
それだけは、出来ない。
悲しませるだけの想いなら、口にしてはならない。
あの夏の日にとっくに、終わっている事なのだから。
「…言えない」
たったの一言すら、彼女を真面に見て伝える事が出来ない。
アスファルトの上に視線を漂わせていた泉夏の頬が、強張る。
目に見えぬ何かを追うように宙を見つめながら、秀王は続けた。
「聞いたところで面白いものではない。大した事でもない」
-自分以外は。
秀王は、笑う。
「だから秘密だ」
ふたつめの大切な事。
用事は済んだような、済んでないような。
でももう、お互い戻らなくてはいけない。
別々の場所へ、帰らなくてはいけない。
どうであってももう、時間はない-。
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