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第9章 邂逅の春

「…先生は、いつもそればかり」
泉夏は呟いた。
「勉強ならなんでも教えてくれたのに、それ以外の事はいつもはぐらかしてばかり。大学にいた時からちっとも変わらない」
泉夏の責めに秀王は苦笑するしかない。
「嘘吐きだし」
恨み辛みを並べ出す彼女に薄い苦笑いを浮かべたまま、秀王は頷きながら耳を傾ける。
言い訳なんかない。
全てその通りだった。
「大事な事は隠して教えてくれない。私はいつも先生が隠したがる事ほど知りたかった」
泉夏は悲痛な心情を、吐露した。
ふたりの両眼が繋がった。
「私は…私は、言った。自分の気持ちを包み隠さず、先生に全て。叶わないのを承知で、勇気を出して、あの時言った。それなのに先生はまだ隠すの？もう最後なのに。もう次はないのに。それでもやっぱり答えてくれないまま…今日もいなくなろうとしているの？」
－なんとか言ってよ、先生。
泉夏は秀王を見据えた。