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桜の季節が巡っても
第9章 邂逅の春
今までそんな事、真剣に考えた事はなかった。
自分の都合に合わせて『神様お願い』-そう、手を合わせた時があったとしても。
本気でその存在を信じてはこなかった、はず。
少なくともあの夏の日は恨んでた。
私から一遍にあなたに関するもの全てを奪っていって。
そう考えると私も、どちらかと言えば、神様なんていないって思っているのかもしれなかった。
泉夏の答えに、秀王は小さく頷く。
まあ、普通はそんなものだよな-と。
でも-彼は続けた。
「昨日と今日だけは、神様っているのかもしれない。…迂闊にも本気で信じてしまいそうになった」
満ち足りた、その口調。
喜びに僅かに狭められた、その瞳。
幸福の余韻に浸るかのような、その表情。
その全部を彼女に与え、秀王は微笑んだ。
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