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第10章 追憶の春

だって伊東君がさあ－そんな泉夏を面白そうに一瞥し、龍貴は語り出す。
「こっちは伊東君なんか端から眼中にないのに、張り合ってくるからさあ」
－つい、いらっとして？
悪びれもせず答える龍貴に、泉夏は頭が痛くなる。
「あのさ、それで私にあんな…。なら、伊東君に直接当たればいいじゃん」
「いやだって、当たりたくてもそんな頻繁に会わないし？俺はこんなにも簡単に伊東君の大切なものを奪えるんだよって、思い知らせてやろうかと？」
－いつまでも、ぐずぐずしてるからさ。
龍貴の口元が意地悪く上がる。
「…私、見せしめの道具として使われたって事？」
泉夏は恨めし気に呟く。
あんな怖い思いして。
例えどんな理由であれ、自分の知ってる彼はそんな事するような人だった？
やっぱり、今日の彼は何か－。