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桜の季節が巡っても
第10章 追憶の春
「付き合っても、短い期間で別れそうな予感が薄々する。だってそもそも好きかと言われたら、嫌いじゃないけどやっぱり好きになれてない。…キスしたら、もしかしたら好きになれるかもってしてみたけど」
-なんの意味もなかった。
後悔の溜め息が零れる。
結末がこうなら、しなきゃ良かった。
しなきゃ、分からなかったけど。
自分は勿論、彼にも悪い事をしてしまった。
お互い傷ついただけ。
何故あの時、賭けに出てしまったのだろう。
忘れる事なんて無理なのに。
あのひとの事も。
そして、彼との口づけも。
苦い記憶として残ってしまうだけ。
忘れたい思い出はどんどん増えてゆくのに。
残したい思い出は全然増えてくれない。
せめて切ない思いくらい、少しはなくって欲しいのに。
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