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桜の季節が巡っても
第10章 追憶の春
「そんなの知ってる。同じにしたら意味ないじゃん。忘れさせてやろうとしてるんだから、違うようにしないとさあ」
「そ、そうだけどっ。でも、でも、こんなのっ…!」
-こんなキス、同じどころか全然違う。
最初から全然違うんだから、そこまでしなくても。
もう大樹とのそれがどんなのだったかすら、曖昧になってきている。
それだけ彼とのは、口唇どころか心さえ攫われてしまっていた。
とりあえずなんとか落ち着こうとする泉夏に、龍貴の顔が間近に迫る。
怯え、鼓動が速まった。
「な、なに?」
「まだ、途中だった」
龍貴は意地悪く、微笑んだ。
もう十分すっかり忘れ去ってるからいいです-固辞しようとしたその口を、塞がれた。
またどんなにされるのかと覚悟した矢先、すぐに唇は自由にされる。
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