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桜の季節が巡っても
第10章 追憶の春
龍貴は更に笑みを重ね。
静かに顔を傾け。
彼女の唇に自分のそれを寄せた。
一瞬の間(あいだ)を置き。
次にはなんの躊躇いもなく、彼女に唇を重ねた。
優しかったのは最初の一秒。
ただ口づけという名を借りただけ-凌辱されているかの如く激しく、唇を吸われる。
思わず、声が漏れそうになる。
意識が飛びそうになる寸前、泉夏は彼を両手で押し止める。
離れる、唇と唇。
肩で息をしながら、やっとの事で泉夏は言葉を紡ぐ。
「…伊東君は舌なんか入れてきてないしっ?」
真っ赤になりつつ、睨み、抗議する。
泉夏のその主張に、龍貴は呆れて鼻で嗤った。
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