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桜の季節が巡っても
第11章 逡巡の春
「今日はなんの帰り?」
家路につく中、龍貴は隣りの泉夏に尋ねた。
「…図書館」
アスファルトに視線を落としつつ、泉夏は答える。
「図書館?」
面白そうに、龍貴は訊き返した。
「まだ春休みだよな。何、休み中も勉強に勤しんでんの?閉館まで?」
ご苦労な事だな-言葉とは裏腹の、少々小馬鹿にしたような口調。
しかし泉夏は、それには反応しない。
無言で歩き続ける彼女に、龍貴は不審そうに目を細める。
「泉夏?」
「…龍」
名を呼んだ相手に同じように自分も名前を返され、龍貴は一瞬、返答に詰まってしまう。
「龍」
そうこうしているうちに、再度泉夏は彼を求める。
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