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第11章 逡巡の春

「何…？」
「…私、先生と逢った」
泉夏の呟きに、龍貴は眉を顰めた。
「私、有栖川先生と今日、図書館で逢ってた」
泉夏はそこで初めて、彼を見た。
またしてもすぐには、龍貴は反応出来ない。
「…お前ってほんといつもいきなり、有栖川先生の話題を俺に振るよね」
「…」
「何？先生、日本にいるの？」
泉夏は首を振る。
「…用事があって、帰って来ただけ。明日にはまた、アメリカに行っちゃうって」
へえ？－龍貴はさして興味のなさそうな返事をする。
「で？お前はなんで有栖川先生が帰国するのを知ってたわけ？連絡でも取り合ってたの？」
龍貴のなんとなく皮肉混じりの問いを、泉夏は速攻で否定した。