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桜の季節が巡っても
第2章 了見の夏
「ほんとに殺され兼ねない雰囲気だったな」
物騒な言葉とは裏腹に、龍貴の肩は震えている。
「…だからお兄ちゃんで遊ばないでよ」
泉夏はうんざりした目を彼にやった。
「あいつとも久々に会ったけど、相変わらずやっぱり面白い奴だよなあ」
日中とは打って変わった夜の帳の中。
対向車に照らされた龍貴の横顔が、艶やかに輝く。
黙っていればそれだけで十分様(さま)になるのに-今の彼はハンドルを強打し、さっきから爆笑し続けてる。
その都度事故を起こさないか、泉夏は冷や汗ものだ。
「龍がわざとお兄ちゃんを煽るような事言うからでしょ」
「俺だろうが誰だろうが、あいつには同じだって。夜の八時にお前を連れ出しに来る男はな」
「…だからって嘘は言わなくていいじゃん」
「嘘?」
龍貴が笑いを収めた。
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