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桜の季節が巡っても
第11章 逡巡の春
「だって実際…!」
-そうじゃん。
最後までは言えなかった。
強引に龍貴に抱き寄せられ。
ふたりの顔は再び触れ合うくらい、近くなっていた。
泉夏の鼓動は先程の非じゃないくらい、スピードを増す。
心臓の音がすぐ耳元しているような、錯覚。
お前が嫌がるなら、次も入れないでしてやろうと思ってたけど-龍貴は扇情的な眼差しで彼女を捉えた。
「なんか久々にすっごい腹立ったから、やっぱ入れる事にする」
たちの悪い微笑みを湛え、龍貴は宣言する。
何を言われているのか-泉夏は瞬時に悟り、小さく幾度も首を振る。
しかしその頃にはもう触れ始めている。
「…見られてるし。やめよ」
-こんなとこで。
店の真正面に車は停められていたので、きっとではなく絶対、出入りする人達に見られてしまう。
泉夏は想像だけで羞恥に焼かれそうだった。
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