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桜の季節が巡っても
第12章 希求の春
いないのに、来たの。
来たって無駄なのに。
何もかもが無意味なのに。
なんで私なんかの為に。
なんでこんな私なんかの為にでも。
泉夏の呟きに、秀王は頭(かぶり)を振った。
「来てくれた」
柔らかな口調と表情で、彼は告げた。
「ちっとも無駄じゃなかった。来る価値は俺にとって十分あった」
嫌味でもなんでもなく、心の底から言ってくれてるのは明白だった。
彼女を見つめるその瞳はどこまでも穏やかで、愛おしさに満ちていた。
来ないと言いながら、のこのこ姿を現した自分に文句ひとつ。
恨み言ひとつ。
怒りひとつ。
決してぶつける事なくただ嬉しそうな彼に、泉夏は自身の醜さを改めて思い知らされた。
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