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桜の季節が巡っても
第12章 希求の春
急に鞄を探り始め、スマホを出したかと思ったら、画面を確認してすぐに突然涙を零す。
何度問いかけても返事はない。
それで龍貴はなんとなく察しがついた。
「…有栖川先生?」
先程までとは打って変わり、言葉こそ発しないものの、彼女の表情ははっきりそれと分かるくらいに変化した。
龍貴は小さく息を漏らした。
「先生、なんだって?」
「…」
「泣く程ショックな事でも書かれてた?」
「…なにも」
「え?」
「メールなんか…メールなんて…一通も送られてきていない」
-だからその現実に傷付いた。
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