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桜の季節が巡っても
第12章 希求の春
何故、その想いを声に。
何故、その名を口に。
何故、彼女をこの腕に。
想像した通りに。
想像した以上に。
香しい、彼女の匂いに。
柔かな、彼女の身体に。
温かな、彼女の吐息に。
夢の中でさえ決して叶わなかったその全てに触れ、恋しさを囁く事を許されているのか-。
今頃自分の想いを伝え、どうかしたいわけじゃない。
彼女にどうにかして欲しいわけじゃない。
どうにもならない事は、自分が一番よく知ってる。
重々、承知している。
なのに。
彼女を見た瞬間溢れ出た愛しさは-もう、どうしようもなかった。
せめて言葉にして、この切なさをやり過ごそうとしていた。
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