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桜の季節が巡っても
第12章 希求の春
今まで必死に抑えてきたものに、次々に感情が支配されてゆく。
少し前まではこの手を彼女に触れる事すら、あんなにも恐れていたのに。
今日が本当の最後だと、決意して帰って来た。
心が千切れる想いで彼女を諦めようと、決心して来た。
最後なのなら。
どうせ諦めなければならない運命ならば。
そう思えば、なんだって出来る気さえしてくる。
いつもの自分とは明らかに違い、冷静でいられなくなっている。
危ういくらいに昂ぶっている。
離したくない。
腕に抱く彼女の細い身体を壊さぬよう-でも最大限に強く、自らに引き寄せる。
その拍子、肩を過ぎた辺りの彼女の滑らかな髪が乱れ、耳朶が覗いた。
白い項が垣間見える。
解放された彼女の匂いたつ色香に-眩暈がした。
酔い痴れる。
彼女に、溺れてしまう-。
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