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桜の季節が巡っても
第13章 相愛の春
悪いのは、私。
悪いのは、すぐに移り変わる私の心。
「龍は優し過ぎる。こうなるのを知ってて、それでも私に行けって言ってくれた」
まさか-泉夏の呟きに、龍貴は喉を鳴らした。
「俺そんなお人好しじゃないし?有栖川先生があんまりしつこいから、逢ってはっきりして来いって思ってさあ。…まあ、それが俺的には珍しく、失敗だった?まさか有栖川先生に、最後の最後でお前を持って行かれるなんてな」
龍貴にしがみつく泉夏の手に、力が籠る。
「まあ、俺は先生を好きなお前が好きだったから。恋した先生を一生懸命追いかけるお前が、凄く可愛いと思ってきたから。そんな姿を見ているうちに、いつしかお前を好きになっていたから。…だから、まあいっか。これからも可愛いお前が見れるなら」
この上なく温かで優しい-それ以外の表現がない龍貴の声が、耳をくすぐる。
「…持って行かれてなんかしないよ。今日でさよならだって言われたし。もう二度と逢わない…そう言って、公園で別れて来た」
今更、逢う術はない-切り出そうとした泉夏に、龍貴は自らの右腕に嵌めた腕時計を確認して言った。
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