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桜の季節が巡っても
第13章 相愛の春
部屋の電話が鳴った時、一瞬誰の事か分からなかった。
「フロントに流川様がお見えになってます」
そもそも自分が日本に戻り、このホテルに滞在している事なんて誰も知らない。
去年日本を発つ際、心惹かれるものを残さないように、殆ど全ての知り合いと連絡を絶った。
なのに。
誰が?
少し考え、それからはっとした。
まさかと思った。
ひとり、知っている。
ひとりだけ、知っている。
自分が想うひとと、同じ名だった。
でも、まさか。
どうして。