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桜の季節が巡っても
第14章 朧夜の春
「もしも俺の心臓の音がしたら…聞こえない振りをしてって、言いたいところだけど」
-笑ってもいいよ。
秀王の予想外の一言に、泉夏は開いた口が塞がらない。
「最初のうちはどうにか誤魔化せたとしても、一晩中はどうしたって無理だ」
「ひとばん…?」
首を傾げた泉夏に、微かに照れているようにも見える顔で秀王は告げた。
「俺は泉夏に一晩中どきどきし続ける」
泉夏の胸に甘い痛みが広がってゆく。
「そんなに長い間は、流石に上手く隠し通せる自信がない」
-だったら、今のうちに笑ってもらった方が気が楽だ。
言って、秀王は泉夏の頭を撫で。
その手は背中に回った。
背に優しく触れる彼の手に、泉夏は泣きそうになる。
「…笑わない」
零れた泉夏のそれに、秀王は微かに笑う。
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