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桜の季節が巡っても
第14章 朧夜の春
溢れた涙を拭おうとし-それより先に彼が拭いてくれた。
「泣かないで」
「これは嬉し涙。先生と一緒で凄く嬉しいから」
強がりでもあり、本心でもあった。
秀王は泉夏を有無を言わさぬ力で抱き寄せ、もうこれ以上は無理なほど互いの身体を密着させた。
聞こえるはずはない。
でも。
聞こえそうだった。
高鳴る心臓の音。
どんどん果てなく大きくなる。
恥ずかしいけど、ふたりだから。
ふたり一緒だから。
もっとどきどきしたっていい。
もっとどきどきしたい。
もっともっと、どきどきして-。
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