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桜の季節が巡っても
第14章 朧夜の春
「泉夏がすぐ側にいて、こんなにもどきどきしてるのに。なんでもないように眠れるはずがない」
驚く泉夏の頬に、秀王は指先を伝わせた。
その頬は-熱を持って、熱かった。
「また暫く泉夏の顔を見る事も、声を聞く事も、叶わなくなる。だから別れる間際まで、泉夏を見ていたい。記憶に沢山刻んでおきたい。折角のその時間を、眠って削ってしまうなんて」
-そんな勿体ない事、俺は出来ない。
真正面から見つめられ。
吐露され。
淋しさから泣きそうだったのに、いつしかそれは嬉しさに変わっていた。
「私もどきどきしてる。こんなにどきどきしてるのに、先生の隣りで眠れるわけないじゃない」
泉夏の告白に、秀王は笑って頷いた。
「私だって、先生を見ていたいの。ずっと、ずうっと、見てたいの。先生の声が聞きたいの。ずっと、ずうっと聞いていたいの-」
言いながら感情が高まり、まなじりに涙が滲んでくる。
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