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桜の季節が巡っても
第14章 朧夜の春
『誘っている』だなんて言われても、普通の人間ならあまりいい気はしないだろう。
不愉快に思ったとしても当然だった。
そんな計算などしていない。
自然な何気ないひとつの言葉、ひとつの仕草だからこそ、こんなにも魅せられてしまうのだ-。
「…先生を誘うだなんて私、絶対してないけれど。でももし、そうだったとしても…先生は私なんかには誘われたりしないでしょ?」
不意に投げかけられる問い。
秀王は尋ねられてる意味が分からなかった。
「私…今年で二十一だけど、先生からしてみればまだまだ子供だろうし。そんな私がおとなの先生を…ゆ、誘惑出来るような色気を醸し出せてるとは到底思えない」
自分で言っておきながら、泉夏はその事実に項垂れる。
思ってるだけと、実際声に出すのでは-落ち込み具合もまた違う。
「私じゃまだ全然、先生を一瞬でも夢中にさせられない」
睫を伏せ気味な泉夏の耳朶に、彼の温かな息がかかる。
「こんなにしておきながら、よく言う-」
予想外の一言に、泉夏はまじましと彼を見上げた。
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