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第14章 朧夜の春

自分を翻弄し続ける彼女に覆い被さるようにして、秀王は泉夏を抱いた。
その耳元に、掠れた声で忠告する。
「…だ」
「せん…せい？」
「そんな風に誘ってきたらだめだ。そう言ったはずだ、泉夏－」
彼女は絶対にしていない－そんなのは百も承知。
『誘われてる』－思い込む事で疾しい自分の気持ちを、無理矢理正当化したいだけだった。
情けない－こんなにまでなる自分が、本当に信じられなかった。
微かな笑い混じりの囁きを受け、泉夏は目を見開いた。
「…だから、そんなの」
－してないって、さっきも言った。
泉夏の声音に若干の硬さを感じ取り、秀王は彼女を確認する。
泣き出しそうにも見える表情をされ、愚かな事を口走ってしまった自分を秀王は恥じる。
「ごめん。冗談だ」
－そんな事、泉夏はしない。
秀王は、彼女の頭を撫でた。