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桜の季節が巡っても
第14章 朧夜の春
それにはもっと、おとなにならないと。
おとなの素敵な女のひとにならないと。
今すぐには難しいけれど、いつかそんな風に想われたい-恥ずかしくもそう願っていたのに。
なのに?
泉夏が信じられない面持ちを向ければ-少しの躊躇いの後(のち)、秀王は迷いを捨てるように口を開いた。
「泉夏に一晩中どきどきさせられるって、言ってたはずだ。ベッドの中でこうして泉夏を抱き締めるよりも前から、もうどきどきして堪らなかった。泉夏の匂いに、泉夏の柔らかさに、泉夏の吐息に、泉夏の甘い声に、泉夏の温もりに、泉夏の眼差しに、泉夏の-」
そこまで言って、彼は言葉を区切る。
「要するに泉夏の全部に、俺は惹かれて仕方がない」
固唾を呑んで泉夏が待てば-微笑まれた。
「泉夏を…どうかしてしまいそうになる。その気持ちを抑えるのに、さっきからそれはもう必死だ。なんでもない風を装ってはいるけど…心の中では口に出来ないくらいの事を考えてる」
-こんな事を言ったら、泉夏は俺を軽蔑するかな。
低く呟き、視線を逸らされた。
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