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桜の季節が巡っても
第3章 恋慕の秋
大学の門を潜り、キャンパスに足を踏み入れた瞬間。
約二か月振りの大学に、なんだか少しどきどきした。
懐かしいような、こそばゆいような-変な感じ。
そんな気持ちを落ち着かせるように、深呼吸をしてみる。
近くのコンビニで買ったばかりの、ペットボトルのお茶を口に含む。
辺りを見回しながら、ゆっくり歩を進める。
春にはそれは見事に薄桃色の花を咲かせた桜の木々も、紅葉の季節への準備にかかっているようだった。
早朝七時。
泊まり込みの研究をしていた学生。
早くから勉強したい熱心な学生。
建物の中には既にいるだろうけれども、構内にはまだ殆ど見られなかった。
秋の澄み渡った空気を全身で感じながら、建物の陰になって普段からあまり人気(ひとけ)のない場所のベンチへ向かう。
桜の木のちょうど真下にあり、騒がしさからも離れ、一人講義室が開くまでの時間を潰すにはちょうど良かった。
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