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桜の季節が巡っても
第3章 恋慕の秋
その場所までもう少し-泉夏の足は、驚きに止まった。
そこには既に先客が腰を下ろしていた。
ベンチの肘置きで頬杖を付き、長い脚を組み、カバーのかかった単行本に目を落としている。
授業以外では滅多にかける事のない眼鏡をし、その表情は微かに憂いを帯びているようにも見えた。
見開いていた部分を読み終わったらしく、肘掛けから離れた右手が新たな頁を捲る。
細く、しなやかな、その指先。
暫し呼吸を忘れ、泉夏は彼を見つめる。
嘘でしょう?
どうしてここにいるの?
夏休み明けて最初の登校。
期待していなかったと言えば嘘になる。
けれど、本当に淡いものだった。
だって今日は先生の講義はなかったし。
きっと逢えないだろうって思って来た。
なのに-。
そこには既に先客が腰を下ろしていた。
ベンチの肘置きで頬杖を付き、長い脚を組み、カバーのかかった単行本に目を落としている。
授業以外では滅多にかける事のない眼鏡をし、その表情は微かに憂いを帯びているようにも見えた。
見開いていた部分を読み終わったらしく、肘掛けから離れた右手が新たな頁を捲る。
細く、しなやかな、その指先。
暫し呼吸を忘れ、泉夏は彼を見つめる。
嘘でしょう?
どうしてここにいるの?
夏休み明けて最初の登校。
期待していなかったと言えば嘘になる。
けれど、本当に淡いものだった。
だって今日は先生の講義はなかったし。
きっと逢えないだろうって思って来た。
なのに-。

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