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桜の季節が巡っても
第14章 朧夜の春
「このまま朝まで一緒にいて?このまま朝まで泉夏を抱き締めさせて?」
-それ以外は、絶対しない。
彼の揺るぎない決意に、泉夏は固く目を閉じた。
抱き締めたまま暫くそのままの体勢でいてみたが-彼女からはなんの反応もない。
秀王は次第に不安を覚え始める。
何もない事の意味-それは最悪の事態さえ想像出来た。
恐々と、彼女からそっと身体を離す。
そこには眉を寄せ、悲痛な面持ちの泉夏がいた。
結ばれた唇は、震えているようにも見えた。
後頭部を鈍器で殴られたかのような衝撃を受ける。
秀王は自分の浅はかさを改めて呪った。
「泉夏-」
決して謝って済む問題ではないけれど。
でも謝る事しか出来ない。
彼が何度目かの『ごめん』を言う前に。
泉夏の右目から零れた涙がまなじりを伝い、シーツを濡らした。
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