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桜の季節が巡っても
第14章 朧夜の春
狼狽える泉夏を、秀王は抱き寄せる。
「『泉夏の嫌がる事は誓って何もしない』と言った。『ただ朝まで側にいて欲しい』と確かに言った」
耳元近くで告げられて、彼が言わんとしている事に泉夏はようやく気付く。
「あっさりと約束を破ってしまって…弁解の余地もない」
彼の懺悔を泉夏は無言で聞く。
「してしまった後の『ごめん』が、信じられないのも重々承知している。それでも恥を忍んで謝るしかない」
-ごめん。
重ねての彼の謝罪に、泉夏の眉が僅かに顰められた。
「もう一度だけ信じて欲しい。二度とこんな事はしない。どうかしてたとしか言いようがない。よく考えてみれば、すぐに分かる事だったのに」
そこまでしてしたい事だったか。
とんでもなかった。
自分の欲など、捨てれば済む事だった。
何が一番大切で。
何を一番失いたくないのか。
答えは明白だった。
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