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第14章 朧夜の春

「夢中って、我を忘れるくらいって事だよね？周りの事なんか見えないし、それ以外の事なんてもう考えられない…それが夢中になるって事だよね？」
「泉夏…？」
彼女が何を言いたいのか、何を言おうとしてるのか－真意を測り兼ねた。
秀王が更に顔を寄せて次の言葉を待てば、泉夏は躊躇いながらも口を開いた。
「我に返るなんて。いけない、やめようだなんて…そこまで夢中になれてないからなんじゃないかって」
言いながら、またしても目の奥が熱くなってくる。
夕食を食べに行く前の、中断された口付けにも傷付いた。
『帰った方がいい』に胸を抉られた。
でも、自分を大事にしてくれてるから。
大切に想ってくれてるから故だって分かったから。
その場は自分のほんとの気持ちは呑み込んだ。
けれど。
それが二回目となると－どうにか収めただけに過ぎないやるせない思いが、再度暴れ出す。