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第14章 朧夜の春

「…随分格好つけた事を言ってみたけど。でも一番の理由はそれじゃない」
放たれた真実に、泉夏は耳を傾ける。
「現実的で…凄く生々しい話になってしまうけれど」
秀王は前置きして、彼女に全てを伝える決意をする。
「こんな展開になるなんて思いも寄らなかったから、用意がない」
「用意…？」
－なんの？
泉夏が問うより刹那早く、彼は白状した。
「ゴムの」
滑らかに口にされ、泉夏はなんの疑問も持たずに納得した。
しかし改めて頭の中で反芻してみれば－猛烈な恥ずかしさが泉夏を攫う。
真っ赤に熟した両頬で彼を見れば－微かに口角が上がったのが確認出来た。
「もしもの話。今ここに用意があったなら、同じ事を言えたかは正直自信がない」
－なんて。
意味あり気に付け足され、どう反応したらいいかなんか分からない。
非常に困っているであろう泉夏の様子に、秀王は苦笑した。