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桜の季節が巡っても
第14章 朧夜の春
いつもは無理でも。
こんな時ぐらい、手慣れた事を言ってあげたい。
『大丈夫』だと。
心から彼女が安堵してくれる台詞を、たった一言でいいから。
その一言が、何故すぐに思い浮かんでくれないのだろう。
今夜は幾度も頼りない自身と対峙してきたけれど。
今ほどそう感じた時はない。
女である彼女にこんな事をさせて。
彼女にこんな思いをさせるくらいなら、自分がすべきだった。
利口ぶった事をしないで。
最初から自分の欲に正直になっていれば良かった。
その結果、例え大恥を掻いていたとしても。
それがなんだと言うのだ。
彼女に恥を掻かす事に比べたらなんでもない。
仮にも男であるのに。
一番大事なひとに何をさせているのだろう?
あまりの情けなさに、秀王の表情は大きく歪む。
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