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桜の季節が巡っても
第14章 朧夜の春
「…コンビニで買ったの」
どんな言動が最良なのか迷っていると、彼女が小さく漏らした。
「…うん」
多分それ以外はないだろうと密かに考えていたので、今回の返事だけはすんなりと出た。
それを手渡した時こそ、信じられないような目で見られたけれど。
今の今まで表面上の反応がほぼまるでなかった彼の即答に、泉夏は急いで言い繕う。
「そっ、それを買う為に『コンビニに寄って欲しい』って、言ったんじゃないじゃないからね?」
事実だけど、言い訳のようにも聞こえ。
『誤解しないで欲しい』という思いとは裏腹に、自分で自分を余計苦しい立場に追い込んでいるようでもあった。
でもやっぱり-言わずにはいられない。
「お化粧を落としたいって思ったのも、シャワー浴びたいなって思ったのも本当。だから色々足りないものを買いたかったの。それを目的にコンビニ行きたかったわけじゃない」
「うん。知ってる。それくらいには、泉夏の事を理解してるつもりだ」
これ以上彼女に、恥ずかしい思いをさせてはいけない-その一心で、秀王は深く頷いた。
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